2023/03/01
WEBTOON産学連携の試み - 第1回viviON座談会
岡本 純(Jun Okamoto)/コンテンツ部 IP開発チーム マネージャー
プロデューサーとして数多くのコンテンツ制作に関わる。
WEBTOON産学連携プロジェクトでは企画立ち上げを担当。
阿部 伸之介(Shinnosuke Abe)/経営戦略部 経営戦略チーム リーダー
新規サービスや、事業の立ち上げを数多く手掛ける。
WEBTOON産学連携プロジェクトでは、プロジェクトマネージャーを担当。
宮崎 晋輔(Shinsuke Miyazaki)/事業推進部 comipoチーム
viviONの運営する電子書店アプリ『comipo』で、編集業務を担当。
WEBTOON産学連携プロジェクトでは、講師として登壇。
―― ひとまず、全6回の授業お疲れさまでした!
実際にやってみての感想……まずは宮崎さんからおうかがいしてもいいですか?
宮崎:はい、お疲れさまでした。感想を言おうとするとよかったことばかりになってしまうんですが……(笑)
でも、一番はちゃんと生徒さんたちがレスポンスを返してくれてうれしかった、というところですね。
もちろん、それぞれ生徒さんたち個々人で熱量の差はあったんですが、中にはインターンとしてviviONに来てくれるほど熱量の高い生徒たちもいたりして、とてもうれしかったです。 僕たちの授業は、きちんと熱量の高い層にリーチできていたんだなぁって。
……あとは、WEBTOON界隈における最新の情報を伝えてあげることもできた、と思っているので、これからの彼らのWEBTOON制作における“土台”のようなものも作ってあげることができたんじゃないかなと思っています。
岡本:確かに! ためになる話ができていた、という自負はありますよね。
宮崎:はい。あと、これはviviONサイドのお話ですが、一度各工程の授業を通しておこなったことで、体系的に今後は教えていくことができるのではと思っています。
阿部:全部言われちゃった! これ、僕が話していたことにはできませんか?(笑)
岡本:まとめられちゃった感がありますね。
阿部:ね。……でも生の現場の声、みたいなのを伝えられたのは本当によかったよね。
宮崎:ですね、どういう基準でクリエイターを選んでるのかとか、対クリエイター、対編集で困ったときの対処法とか(笑) ……トラブルもたくさん対応してきた僕たちだから出てきたお話しだと思います。
そういった、業界を生き抜く上での知恵みたいなものは、ぜひ今後役立てていってほしいなと思いますね。
阿部:そうだね、授業については今宮崎さんが話してくれたとおりの感想です。
別の視点で話をするのなら、今回のことで“教育機関もやっぱりWEBTOONに興味があるんだ!”という確信を得ましたね。
東京コミュニケーションアート専門学校からはじまった、この産学連携ですが、今は他の専門学校や美術大学にもお声がけをしているんです。
……皆、一様に高い熱があるのを感じますね。
宮崎:本当に、こちらがびっくりするくらいですよね
阿部:新しい業界だからこそ、人材への需要と供給もまだまだ満たされていない。それって夢のある話ですよね。
会社として、今回みたいにWEBTOONについて興味があって、かつご縁もあり受講してくれた生徒たちには何かしらのちゃんとした出口を用意してあげたい。
……結構壮大な計画だと思うんですけど、その最初の一歩を踏み出せたっていうのは大きい気がします。
宮崎:発起人である岡本さんはどうです? 理想の産学連携ができましたか。
岡本:はい、総じてとってもよかったと思います!
私自身、専門学校の生徒、そこから巣立ったクリエイター、戻ってきて、講師。そして、今はメーカーに勤めて発注する側になって……おおよそクリエイターが通るすべてのルートを通ってきたと思っているんですが……。
授業を始める前は、私が学生だった頃とはいろいろと時代も変わっているだろうな、と考えていたんです。
昔の学生たちって、ご飯を買うお金を削ってでも、画材を買って描く! これができないと死んじゃう! みたいな泥臭さがあったのに今はそこまでの熱量はないのかも……って。
だけど、実際に生徒さんたちと関わってみたら、ぜんぜん変わってないですね!(笑)
阿部:今も泥臭かった?(笑)
岡本:ですね、今もひたむきに取り組む姿勢に違いはなかったです。
そして、個人的にはこれからの人たちにも変わらずにいてほしい部分ですね。
宮崎:確かに、インターンに来てくれた生徒たちも熱かったですもんね!
岡本:そうなんですよ、業務の幅を超えた部分まで色々と意見を聞きに来てくれて……あれ? 昔より熱いんじゃ? と思うくらいでした。
―― インターンのお話が出ましたが、授業を受けてくれた生徒にはどうなってほしい、など何か展望はありますか?
宮崎:そうですね。全6回の授業を受けてもらっても、それで完璧に描けるようになるわけじゃないですしね。熱意を持っている生徒たちには、これをきっかけにしてもらえたらと思います。
一歩踏み出してくれるかどうかはあくまで本人次第ですし。
阿部:そうだね。……ちなみに僕はクリエイティブについては素人なんだけど、今回傍はたから見ていて思ったのは、WEBTOONは分業制だからこそ“一点だけを本気で磨けば戦うことができる!”というのは本当にいいなってこと。
多分、そこに反応した生徒たちもたくさんいるんじゃないかなって思いますね。
岡本:昔ってマンガ家ひとりで、アイデア出しをして、カメラワークを考えてコンテ切って、作画してアレコレしてブランディングまで〜……って一人でやらなくちゃいけないことが多かったですからね。
阿部:うん、だから今までだったら道半ばで諦めていたような人たちにも、希望を与えられるというか……生き残る術のようなものをちょっとでも提示できたなら嬉しいなと思いますね。
―― 皆さんの考えるviviONのWEBTOONの今後をお聞かせください。
宮崎:僕はずっと編集としてお仕事をしてきたんですが、やっぱりヒット作を生み出すのって難しいことなんですよ。当然、ケースバイケースで再現性もないし……作家個人が命を削って描く、みたいなことが必要だったりする。
だけど、唯一再現性がある……かもしれない。というか、その可能性があるのではと思っているのが、WEBTOONなんです。
阿部:たしかに工程別だし、ある程度各クリエイターが一所懸命というか、自分の持ち場を守って高いクオリティでお仕事をし続けられるのであれば、精神性とか根性論とかそういう話じゃなくなってくるもんね。
宮崎:言語化できないセンスや精神論ではなく、もっときちんと体系化したメソッドを伝えてあげられる……それってすごいことなんですよ。
これはクリエイターだけじゃなくって、編集のたまごたちに対してもそうですね。
岡本:それはいいなぁ。本当にWEBTOONの編集ができる方は市場にいないですからね。
なにせ、日本のWEBTOONは始まったばかりなので当然ではあるのですが。
宮崎:先んじてってわけじゃないけれど……。
まだWEBTOONって“誰もが知ってる!”みたいな大きなヒット作が次々に出てきているわけではないじゃないですか。でもきっと、今後はアニメ化作品含めてヒット作がどんどん出てくると思うんですよね。
それで、わっ!とWEBTOONをやりたいっていうクリエイターが増えてきたときに、“うち(viviON)こういうノウハウありますよ?”って提示ができるようになっているとすごいですよね。
阿部:いいね。できればさ、viviONから出るWEBTOONってなんか面白いんだよね。作家は違うのに、全部なんか面白い……ってそう言われたいな。
宮崎:僕らの作ったメソッドがハマっている、ってことですね。
岡本:とても夢がありますねぇ。それができるように、私達はそのメソッドを作るべく“今”頑張っておかないと。
―― 最後にこれを読んでいる方へ、一言お願いします。
宮崎:普通の横マンガだと、プロになれるのは一作につき一人か、せいぜい二人。だけど、WEBTOONならば各工程で少なくとも五人がWEBTOONマンガ家になることができる。
単純に言えば、マンガ家になれる可能性が5倍もある魔法の媒体だと言えると思います。
それってすごいことですよね。ぜひ、まずは軽い気持ちでチャレンジしてもらえたらと。
岡本:そうですね、挑戦お待ちしております!
私は……かねてより思っていたことではあるのですが、海外のカルチャーと日本のカルチャーをブレンドして“viviON WEBTOON”の土台を作っていきたいと考えています。少し大きなお話になってしまいますが、このWEBTOONプロジェクトを介して日本全体の“クリエイティブ”の成長の一助になるような、そんな取り組みができたらと……大きな野望を持っています。
阿部:夢がでっかいね!
そうですね、僕は既存の“マンガ”ってカテゴリーで見たときって、すごくレッドオーシャン※だと思うんです。そこに今から入っていくのって、障壁が高いし……いろんな施策を講じる必要がありますよね。
でも、WEBTOONについてはまだ国内のどこのスタジオ・出版社にもノウハウやメソッドがない。かつ、制作工程の仕組み化や再現性に重点を置いて戦っているところは、本当に少ないと感じています。
だから、そういう意味ではviviONは“仕組み化・再現性のメソッド”で第一人者になれるかもしれない。
……もちろん、後進育成という意味で産学も含めてWEBTOON業界においての第一人者になることができるといい、と考えています。
※...競争性の高い市場
インタビュアー/あいざわあつこ